
「外化」というパスワードを使って現実の世界へ顕在化する。そしてアート作品として昇格させること、それが私のサバイバルの変容です。自己の枠組みからいつでも自由に飛び立つことが出来るように、いろいろな「インタビジョン」を創作し実験を企てようとわくわくしています。そして5年後10年後、そこで私が何をどう表現しているかも楽しみです。提示する者と観る者との間で感じるさまざまな出来事が、コミュニケーションの道具として広がるかもしれません。作品の完成度も大切ですが、表現した作品の中に意味があるだけではなく、それを他者も利用し巻込むことでさらに意味が生まれると思います。
当事者研究は、「私の脳に映る模様」から多様性のある世界を引き出してくれました。作品が一つ完成される度にまた一つ気づきのスイッチが入ります。いつまでも完成されたものに頭を垂れていては未来の備えが出来ませんが、こうしてさまざまに変換した創造的模様「インタビジョン」を、みなさまにもぜひ鑑賞して頂けることを楽しみにしております。
(推薦文)
水玉小僧の快挙!
上野千鶴子(社会学者・東京大学名誉教授・RSSC特任教授)
立教セカンドステージ大学(RSSC)という、応募資格50歳以上のコースで教えるわたしのゼミに、鈴木さんが初めて登場したときのことは忘れない。当事者研究を掲げる上野ゼミでの研究計画書に、鈴木さんは「水玉の研究」と書いたのだ。美術のクラスでもなくデザイン科でもない上野ゼミで、水玉の研究はできません、何かカン違いでも…とわたしは困惑した。よくよく聞いてみると、小さい頃から彼を悩ませていた水玉の増殖について研究したいのだという。それなら思い当たる。反復強迫は神経症の基本のき。当事者研究の発祥の地は、北海道浦河にある「べてるの家」である。統合失調症の患者さんたちの中間支援施設として生まれた。幻聴や妄想に名前をつけて外部化し、それとコミュニケーションすることを通じて、統制可能な平和な人生のパートナーにしていく。
わたしたち上野ゼミのクラスメートは、爾来鈴木さんを「水玉小僧」と命名して彼の当事者研究の帰趨を見守った。もともとデザイナーの鈴木さんは、スリムなボディに水玉模様のネクタイをしたりしてかなりのお洒落さん。水玉を隠さずオモテに出してトレードマークにした。パターンの無限連鎖は、草間彌生の水玉アートにも見られる。芸術は自己回復の手段でもある。鈴木さんを悩ませている「妄想」を「自己表現」に変えちゃったらどうだろう。水玉をどんどん増殖させて、水玉アーチストになっては・・・という上野ゼミのそそのかしが効を奏したのかどうか。水玉小僧は創造力を発揮して、見たこともないようなアート作品が次々に生まれた。自慢するが、水玉小僧の作品をアートとして買い求めたクライアントは、わたしが第1号である。この先、クライアント2号、3号と続いて、水玉アートの愛好者が増えてほしい。そしていつかわたしの求めた作品に、高い値がつくことを期待している(笑)。